「シンセティックレザーって何?合皮と違うの?」「本革と比べてどうなの?」——レザー素材を選ぶとき、こんな疑問を持ったことはありませんか。シンセティックレザーは、見た目や手触りが本革に近いにもかかわらず、軽さ・価格・メンテナンスのしやすさで多くのメリットを持つ素材です。一方で、経年劣化や通気性といった弱点もあり、用途によって向き不向きがはっきり分かれます。この記事では、シンセティックレザーの基本から本革との違い、選び方、お手入れ方法まで、知っておきたい知識を体系的に整理しました。
・シンセティックレザーの意味と種類(PU・PVCの違い)
・本革との具体的なスペック比較と選び方の基準
・用途別のおすすめ素材と失敗しないポイント
・長持ちさせるお手入れ方法と避けるべきNGケア
シンセティックレザーとは?基本をわかりやすく解説

シンセティックレザーの意味と定義
シンセティックレザーとは、英語の「synthetic leather」をカタカナ表記したもので、日本語では「合成皮革」にあたります。布やマイクロファイバーなどの基布(きふ)の上にポリウレタン(PU)やポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂をコーティングし、本革のような外観と質感を再現した素材です。
「合皮」や「フェイクレザー」と呼ばれることもありますが、いずれも天然の動物皮革を使わずに人工的に作られたレザー風素材という点では同じカテゴリーに入ります。近年はファッション業界を中心に「シンセティックレザー」という呼び方が広まっており、商品タグやECサイトで見かける機会が増えています。
ただし、合成皮革と人工皮革は厳密には製法が異なります。合成皮革は基布に樹脂を塗布したもの、人工皮革は不織布に樹脂を含浸させたもので、人工皮革のほうが本革に近い構造です。シンセティックレザーは広義にはこの両方を含む総称として使われることが多いですね。
シンセティックレザーが生まれた背景
シンセティックレザーの開発が本格化したのは1950〜60年代です。当時、天然皮革の供給量には限りがあり、需要の増加に対応するために化学繊維メーカーが代替素材の研究を進めました。日本では1964年にクラレが世界初の人工皮革「クラリーノ」を発売し、ランドセルや靴の素材として広く普及しました。
その後、ポリウレタン樹脂の加工技術が進化し、見た目・質感ともに本革に近い製品が次々と登場しています。2020年代に入ってからは、動物福祉や環境配慮の観点から「エシカル素材」としてシンセティックレザーを積極的に採用するブランドが増えています。ファッション業界ではステラ マッカートニーなどが先駆的な取り組みを行っており、素材の選択肢として定着しつつあります。
シンセティックレザー=合成皮革の英語表記。布の上に樹脂を塗って本革風に仕上げた素材で、PU(ポリウレタン)とPVC(塩ビ)の2タイプがある。
PUレザーとPVCレザーの2種類がある
シンセティックレザーは、使われる樹脂の種類によって大きく「PUレザー」と「PVCレザー」の2つに分かれます。この違いを知っておくと、製品選びで失敗しにくくなりますよ。
PUレザー(ポリウレタンレザー)は、表面にポリウレタン樹脂を使ったタイプです。柔軟性が高く、手触りがしなやかで本革に近い質感を出しやすいのが特徴です。通気性もPVCより優れており、衣類やバッグ、ソファなど肌に触れる用途に多く使われています。ただし、加水分解(水分と反応して樹脂が分解する現象)が起こりやすく、製造から3〜5年程度で表面がボロボロと剥がれることがあります。
PVCレザー(ポリ塩化ビニルレザー)は、塩化ビニル樹脂を使ったタイプです。PUレザーに比べて硬めの質感ですが、耐水性・耐久性に優れ、加水分解が起きにくいのがメリットです。価格もPUレザーより安い傾向があり、テーブルマットやブックカバー、業務用の椅子張りなどに使われています。一方で、通気性がほぼなく、長時間座ると蒸れやすいのが弱点です。
「フェイクレザー」「合皮」との違いは?
結論から言うと、シンセティックレザー・フェイクレザー・合皮は、ほぼ同じものを指す呼び方の違いです。ただし、使われるシーンやニュアンスに微妙な差があります。
「合皮(合成皮革)」は日本で古くから使われている一般的な名称で、JIS規格にも定義がある正式な用語です。「フェイクレザー」は英語圏で広く使われる呼び方で、ファストファッションブランドがタグに記載していることが多いですね。「シンセティックレザー」はより専門的・中立的な響きがあり、アウトドアブランドやインテリアメーカーが製品説明で使う傾向があります。
注意したいのは「ヴィーガンレザー」との混同です。ヴィーガンレザーはシンセティックレザーを含む概念ですが、最近はサボテンやキノコ、りんごの皮などを原料にした植物由来レザーも含まれます。植物由来レザーは石油系のシンセティックレザーとは製法が異なるため、「ヴィーガンレザー=シンセティックレザー」とは限りません。
シンセティックレザーの特徴とメリット
本革より軽くて水に強い
シンセティックレザーの大きなメリットの一つが、軽量性と耐水性です。同じサイズのバッグで比較すると、本革製に対してシンセティックレザー製は30〜50%程度軽いのが一般的です。通勤バッグや旅行用のボストンバッグなど、持ち運ぶ時間が長いアイテムほどこの差を感じやすくなります。
耐水性についても、本革が水シミや変色を起こしやすいのに対し、シンセティックレザー(特にPVCレザー)は表面が樹脂でコーティングされているため水を弾きます。雨の日でも気にせず使えるのは、通勤・通学で毎日使う人にとっては大きなポイントですね。
ただし、PUレザーの場合は縫い目や端の処理部分から水が染み込むことがあります。「水に強い」といっても完全防水ではないので、大雨の日に長時間濡らし続けるのは避けたほうが安全です。
シンセティックレザーは本革の30〜50%の軽さ。水に強いのはPVCレザーの方で、PUレザーは縫い目から水が入ることもある。
カラーバリエーションが豊富
本革はなめし・染色の工程に制約があるため、発色できる色の幅に限界があります。一方、シンセティックレザーは樹脂の段階で自由に着色できるため、鮮やかなレッドやブルー、パステルカラー、メタリック系など、本革では出しにくい色合いも量産が可能です。
表面の型押し(エンボス)も自在で、クロコダイル風やパイソン風、シボ(細かい凹凸)、スムース(平滑)など、テクスチャーのバリエーションが豊富に揃います。これはインテリアファブリックとしても大きな利点で、ソファやダイニングチェアの張り地にシンセティックレザーを選べば、部屋のカラースキームに合わせた色を見つけやすくなります。
ただし、安価な製品では染料が安定していないことがあり、紫外線による退色(色褪せ)が本革より早く進む場合があります。窓際に置く家具や日光が当たる場所で使うアイテムは、UV耐性を確認してから選ぶのがポイントです。
動物由来ではないエシカルな選択肢
動物の皮を使わないシンセティックレザーは、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から注目されている素材です。欧米を中心に「クルエルティフリー(動物を傷つけない)」を掲げるブランドが増えており、ファッション業界では大きなトレンドになっています。
一方で、シンセティックレザーの多くは石油由来の化学素材で作られているため、環境負荷がゼロというわけではありません。PVCレザーは焼却時にダイオキシンが発生するリスクがあり、PUレザーもマイクロプラスチック問題の一因として指摘されています。「エシカル」という言葉の響きだけで判断せず、素材の製造過程や廃棄方法まで含めて考えることが大切ですね。
最近では、水性ポリウレタンを使った環境配慮型のシンセティックレザーや、リサイクルPETを基布に使った製品も登場しています。環境面が気になる方は、こうした次世代素材にも注目してみてください。
シンセティックレザーのデメリットと注意点

経年劣化でひび割れ・剥がれが起きる
シンセティックレザーの最大の弱点は、経年劣化が避けられないことです。特にPUレザーは「加水分解」という化学反応により、製造から3〜5年程度で表面のポリウレタン層がボロボロと剥がれてきます。これは使用頻度に関係なく、保管しているだけでも進行する現象です。
押し入れにしまっておいたPUレザーのバッグを数年ぶりに出したら、表面がベタベタしていたり、粉を吹いたように白くなっていたりした——これは加水分解の典型的な症状です。一度始まると元に戻すことはできず、補修も難しいため、買い替えが必要になります。
PVCレザーは加水分解が起きにくいものの、経年で可塑剤(柔軟性を出す添加剤)が揮発して硬くなり、ひび割れが発生します。使用環境にもよりますが、5〜10年程度が寿命の目安です。一方、本革は適切にケアすれば10年以上使えるものも多く、この耐久年数の差がシンセティックレザー最大のトレードオフと言えます。
PUレザーの加水分解は使っていなくても進行します。「大事にしまっておいたのにボロボロ」はよくある失敗パターン。長期保管する場合は風通しのよい場所を選び、ビニール袋で密封しないことが大切です。
通気性が低く蒸れやすい
シンセティックレザーは表面を樹脂でコーティングしているため、本革と比べて通気性が大幅に低くなります。本革は動物の皮の繊維構造がそのまま残っているため、微細な穴を通じて湿気を逃がす性質があります。一方、シンセティックレザーの表面は樹脂の膜で覆われており、透湿性は本革の30〜50%程度とされています。
この差が顕著に出るのが、椅子やソファの座面です。夏場にPVCレザーの椅子に長時間座ると、背中や太ももの裏が汗で蒸れてベタつきを感じやすくなります。オフィスチェアの張り地としてシンセティックレザーを選ぶ場合は、メッシュ素材との組み合わせや、座面にファブリッククッションを敷くといった工夫が必要です。
PUレザーのほうがPVCレザーより通気性は高いですが、それでも本革やファブリック素材には及びません。衣類として着る場合も、裏地がムレにくい素材かどうかをチェックすると快適さが変わりますよ。
本革のような経年変化(エイジング)は楽しめない
本革の魅力の一つに、使い込むほど色が深まり、ツヤが出て「味」が増す経年変化(エイジング)があります。残念ながら、シンセティックレザーではこのエイジングは起こりません。新品のときが最も見た目がよく、そこから徐々に劣化していくのがシンセティックレザーの宿命です。
ただし、これは見方を変えるとメリットでもあります。本革は使い始めの色ムラや傷が気になるという人もいますが、シンセティックレザーは使用期間中ほぼ均一な見た目を保ちます。「きれいな状態を維持したい」「定期的に買い替えて新しいデザインを楽しみたい」という人には、むしろシンセティックレザーのほうが向いているとも言えますね。
「革の経年変化を楽しみたい」という方には本革一択ですが、「清潔感のある見た目をキープしたい」という方にはシンセティックレザーが合っています。どちらの変化を好むかで選ぶのが、満足度の高い買い物につながります。
シンセティックレザーの寿命はPUで3〜5年、PVCで5〜10年が目安。本革のようなエイジングは起きず、新品から徐々に劣化する一方通行の変化。
シンセティックレザーと本革を徹底比較
素材スペックで見る5つの違い
シンセティックレザーと本革の違いを、スペック面で整理してみましょう。何となくのイメージではなく、数値や具体的な性能で比較すると、自分の用途に合った素材が見えてきます。
| 比較項目 | シンセティックレザー(PU) | シンセティックレザー(PVC) | 本革(牛革) |
|---|---|---|---|
| 耐久年数 | 3〜5年 | 5〜10年 | 10年以上(ケア次第) |
| 耐水性 | ○(縫い目に注意) | ◎ | △(水シミ注意) |
| 通気性 | △(本革の30〜50%) | × | ◎ |
| 重さ | 本革の50〜70% | 本革の50〜70% | 基準 |
| お手入れ | 水拭きOK・簡単 | 水拭きOK・簡単 | 専用クリーム必要 |
| 価格帯(バッグの場合) | 3,000〜15,000円 | 1,000〜8,000円 | 15,000〜100,000円以上 |
| エイジング | なし(劣化のみ) | なし(劣化のみ) | あり(色・ツヤが変化) |
こうして並べてみると、シンセティックレザーは「軽さ・耐水性・手軽さ・価格」で本革を上回り、本革は「耐久年数・通気性・エイジング」で勝っています。どちらが優れているかではなく、自分の使い方に合った素材を選ぶことが大切ですね。
価格帯の目安とコスパの考え方
シンセティックレザー製品は、本革の5分の1〜3分の1程度の価格で手に入ることが多いです。たとえばトートバッグなら、本革製が20,000〜50,000円台のところ、PUレザー製なら3,000〜10,000円程度が相場です。初期コストだけで見れば圧倒的にシンセティックレザーが有利ですね。
ただし、長期的なコスパで考えると話が変わります。PUレザーのバッグが3年で寿命を迎えると仮定すると、10年間で3〜4回買い替えが必要です。1回5,000円として合計15,000〜20,000円。一方、本革のバッグを30,000円で買い、10年使えれば年間コストは3,000円です。長く使う前提なら、本革のほうがコスパがよいケースもあります。
一方で、「トレンドに合わせて数年ごとに買い替えたい」「子育て中で汚れを気にせず使いたい」という場合は、シンセティックレザーのほうが気兼ねなく使えます。コスパは「自分の使い方×使用年数」で判断するのがポイントです。
見た目・手触りの違いを見分けるポイント
最近のシンセティックレザーは品質が向上しており、一見しただけでは本革と見分けがつかない製品も増えています。それでも、いくつかの点を確認すれば違いは判別できます。
まず「断面」を見てください。本革は断面が繊維質で毛羽立っていますが、シンセティックレザーは基布(布地)の層と樹脂の層がはっきり分かれて見えます。次に「におい」。本革には独特の動物性の匂いがありますが、シンセティックレザーは化学的な匂い(新品のビニールに近い匂い)がします。
手触りの違いとしては、本革は温度になじんで触ると温かく感じるのに対し、シンセティックレザーは触った瞬間にやや冷たく、表面がツルッとした均一な感触です。また、本革には天然素材ならではの微妙な色ムラやシボのばらつきがありますが、シンセティックレザーは型押しが均一で、パターンが規則的に繰り返されています。
ECサイトで購入する場合は断面や匂いを確認できないため、「素材表記」を必ずチェックしましょう。「PU」「合成皮革」「synthetic leather」と書かれていればシンセティックレザー、「牛革」「本革」「genuine leather」なら天然皮革です。
用途別・シンセティックレザーの選び方
バッグ・財布にはPUレザーがおすすめ
バッグや財布は毎日手に触れるアイテムなので、手触りの柔らかさが重要です。PUレザーはPVCレザーに比べてしなやかで、曲げ伸ばしへの追従性が高いため、バッグの開閉や財布の折り曲げでひび割れが起きにくくなっています。
選ぶときに注目したいのは「基布の種類」です。マイクロファイバー基布を使ったPUレザーは、コットン基布のものに比べて強度が約2倍あり、引き裂きにも強いとされています。やや価格は上がりますが、通勤バッグのように毎日使うものなら基布にマイクロファイバーを使った製品を選ぶと耐久性が上がります。
よくある失敗は、「安さ」だけで選んで数ヶ月で表面がひび割れてしまうケースです。1,000円台のPUレザーバッグは樹脂層が薄いものが多く、摩擦に弱い傾向があります。毎日使うバッグなら、3,000〜5,000円以上の価格帯を目安に選ぶと、極端に早い劣化を避けやすくなります(※価格は目安です。製品によって異なります)。
バッグ・財布にはPUレザー。基布がマイクロファイバーのものは引き裂き強度が約2倍。毎日使うなら3,000円以上を目安に選ぶと失敗が減る。
ソファ・椅子張りには耐久性を重視
ソファやダイニングチェアの張り地にシンセティックレザーを使う場合、最も重視すべきは「耐摩耗性」です。家具の張り地には「マーチンデール法」という耐摩耗試験の数値が記載されていることがあり、住宅用なら15,000回以上、業務用なら30,000回以上が目安とされています。
家具用途ではPVCレザーのほうが選ばれることが多いです。理由は、PUレザーより加水分解に強く、汚れた際の掃除も簡単だからです。飲食店の椅子やクリニックの待合ソファにPVCレザーが多いのは、この耐久性とメンテナンス性が評価されてのことですね。
家庭のソファで注意したいのは、直射日光と暖房器具の熱です。PVCレザーは高温に弱く、直射日光が当たり続けると可塑剤の揮発が加速して硬化・ひび割れが早まります。窓際にソファを置く場合は、UVカットカーテンとの組み合わせを検討するとよいですよ。
衣類・ファッション小物での使い分け
ライダースジャケットやスカート、ベルト、手袋など、ファッションアイテムでもシンセティックレザーは広く使われています。衣類として着用する場合、最も気になるのは「蒸れ」と「着心地」です。
ジャケットやコートなど面積が広いアイテムには、PUレザーの中でも透湿性を高めた「ウレタン微多孔膜」タイプがおすすめです。一般的なPUレザーの透湿度が2,000〜3,000g/㎡/24hなのに対し、微多孔膜タイプは5,000g/㎡/24h前後あり、長時間着用しても蒸れを軽減できます。
ベルトや時計バンドのような小さなアイテムなら、PVCレザーでも問題ありません。肌に触れる面積が小さいため蒸れが気にならず、PVCの耐久性の高さがむしろメリットになります。雨の日の時計バンドとして、PVCレザーのものを1本持っておくと便利です。
季節の使い分けとしては、蒸れやすい夏場はシンセティックレザーの衣類を避け、秋冬のアウターとして取り入れるのが快適に着こなすコツです。
シンセティックレザーのお手入れ方法
日常の汚れは水拭き+中性洗剤で落とす
シンセティックレザーの日常的なお手入れは、本革と比べてずっと簡単です。柔らかい布を水で濡らして固く絞り、表面を拭くだけで大半の汚れは落とせます。皮脂汚れや食べこぼしなど、水拭きで落ちない場合は、中性洗剤(食器用洗剤でOK)を水で薄めた液を布に含ませて拭き取ります。
洗剤を使った後は、必ず水拭きで洗剤成分を拭き取り、乾いた布で水分を取り除いてください。洗剤が残ったまま放置すると、樹脂層を傷めて劣化を早める原因になります。汚れを落としたあとは風通しのよい場所で自然乾燥させれば完了です。
本革のように専用クリームやオイルを塗る必要はありません。むしろ、本革用のクリームやオイルをシンセティックレザーに使うと、樹脂層の表面に油膜が残ってベタつきの原因になることがあります。「レザー」と名がついていても、ケア方法はまったく別物と覚えておきましょう。
柔らかい布を水で濡らし、固く絞って表面を拭く
落ちない汚れは中性洗剤を水で薄め、布に含ませて拭く
洗剤を水拭きで拭き取り、乾いた布で水気を取って自然乾燥させる
保管時の注意点と劣化を遅らせるコツ
シンセティックレザー製品を長持ちさせるには、保管方法が重要です。最大の敵は「高温」「多湿」「密封」の3つ。PUレザーの加水分解は湿度が高いほど加速するため、湿気の多いクローゼットの奥や、ビニール袋に入れたままの保管は避けてください。
理想的な保管方法は、不織布の袋に入れて風通しのよい場所に置くことです。型崩れ防止のために、バッグの場合は中に新聞紙や緩衝材を詰めておくと形をキープできます。シューズの場合はシューキーパーを入れておくとよいですね。
もう一つの劣化要因が紫外線です。窓際に置いたシンセティックレザーのソファや、車のダッシュボードに放置したバッグは、紫外線で樹脂が分解されて退色やひび割れが早まります。使わないときは直射日光の当たらない場所に移す習慣をつけると、寿命が1〜2年変わることもあります。
やってはいけないNGケア3つ
シンセティックレザーのお手入れで避けるべきポイントを3つまとめます。知らずにやってしまうと寿命を大幅に縮めてしまうので、注意してくださいね。
1つ目は「アルコール・除光液での汚れ落とし」です。ボールペンのインク汚れなどを落とそうとして、アルコールやアセトン(除光液の主成分)を使うと、樹脂層が溶けて表面がまだらに変色します。インク汚れには消しゴムで軽くこするか、専用のクリーナーを使ってください。
2つ目は「ドライヤーでの強制乾燥」です。雨に濡れたシンセティックレザーを早く乾かそうとしてドライヤーの熱風を当てると、PUレザーは表面が波打ち、PVCレザーは硬化してひび割れの原因になります。自然乾燥が鉄則です。
3つ目は「本革用クリームの使用」です。先述の通り、本革用のオイルやクリームはシンセティックレザーの樹脂表面に浸透せず、ベタつきや変色の原因になります。シンセティックレザー専用のケア用品を使うか、水拭きだけで十分です。
- 水拭き+中性洗剤で汚れ落とし
- 不織布袋に入れて風通しのよい場所で保管
- 型崩れ防止に中身を詰めて保管
- アルコール・除光液で汚れを拭く
- ドライヤーで強制乾燥する
- 本革用のクリーム・オイルを塗る
シンセティックレザーのケアは「水拭き+中性洗剤」が基本。本革用のクリームは使わないこと。保管は高温・多湿・密封を避けるのが鉄則。
シンセティックレザーに関するよくある疑問
シンセティックレザーは何年くらいもつ?
使用環境や素材の種類によりますが、PUレザーで3〜5年、PVCレザーで5〜10年が一般的な寿命の目安です。これは「使い物にならないほど劣化するまで」の期間であり、見た目の劣化(色褪せ、軽いひび割れなど)はもう少し早い段階から始まります。
寿命を左右する最大の要因は「使用頻度」と「保管環境」です。毎日使うバッグと、月に数回しか使わないバッグでは摩耗の進み方がまったく違います。また、高温多湿の環境に置かれたPUレザーは、2年程度で加水分解が始まることもあります。
実は、シンセティックレザーの寿命は「製造日」からカウントされるという点も見落としがちです。店頭で売れ残っていた在庫品や、フリマアプリで「未使用」と書かれている品も、製造から時間が経っていれば加水分解が進んでいる可能性があります。購入する際は、可能であれば製造年を確認するか、なるべく新しい製品を選ぶのが賢い買い方です。
ヴィーガンレザーとシンセティックレザーは同じ?
厳密に言うと、同じではありません。ヴィーガンレザーは「動物由来の素材を使わないレザー風素材」の総称で、シンセティックレザー(石油由来の合成皮革)はその中の一つのカテゴリーです。
近年注目されているのが、植物由来のヴィーガンレザーです。サボテンの葉、キノコの菌糸体(マイセリウム)、りんごの搾りかす、パイナップルの葉繊維(ピニャテックス)など、さまざまな原料から作られるレザー風素材が開発されています。これらは石油由来ではないため、従来のシンセティックレザーとは区別されます。
ただし、植物由来レザーの多くは価格が高く、耐久性や量産性の面でまだ発展途上です。現時点で「ヴィーガンレザー」と表記されている製品の大半は、従来のPUレザーやPVCレザーです。購入時は「ヴィーガンレザー」の表記だけでなく、具体的な素材名(PU、PVC、植物名など)を確認するのがおすすめです。
雨の日に使っても大丈夫?
基本的には問題ありません。シンセティックレザーは表面が樹脂でコーティングされているため、少々の雨で水が染み込むことはほぼありません。むしろ、水シミを気にしなくてよいのは本革にはないメリットです。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、PUレザーの縫い目や端の処理部分から水が染み込む可能性があること。特にバッグの底部分や、ファスナー周りは水が入りやすいので、大雨の日は防水スプレーをかけておくと安心です。
2つ目は、濡れたあとの乾かし方です。先ほどのNGケアでもお伝えした通り、ドライヤーや暖房器具の前で急速に乾かすと、樹脂層にダメージを与えます。タオルで水分を拭き取ったら、形を整えて風通しのよい場所で自然乾燥させてください。雨の日でも気軽に使えるのがシンセティックレザーの強みですが、濡れた後のケアを怠ると寿命が縮む原因になります。
意外と知られていませんが、シンセティックレザーに使える防水スプレーは「シリコン系」を選ぶのがポイントです。フッ素系の防水スプレーは通気性のある天然素材向けに設計されており、樹脂コーティングされたシンセティックレザーには効果が薄い場合があります。シリコン系なら表面にしっかり膜を作ってくれます。
まとめ|シンセティックレザーとは何かを理解して賢く選ぼう
シンセティックレザーとは、布などの基布にポリウレタン(PU)やポリ塩化ビニル(PVC)をコーティングして、本革の見た目と質感を再現した合成素材です。「合皮」「フェイクレザー」と同じカテゴリーの素材であり、近年はエシカルな選択肢としても注目されています。
本革と比べて「軽い・水に強い・手入れが簡単・価格が手ごろ」というメリットがある一方で、「経年劣化が避けられない・通気性が低い・エイジングが楽しめない」というデメリットもあります。どちらの素材が優れているかではなく、自分の用途・使用期間・予算に合わせて選ぶのが正解です。
この記事のポイントをまとめます。
- シンセティックレザーにはPU(柔らかい・衣類やバッグ向き)とPVC(丈夫・家具や小物向き)の2種類がある
- PUレザーの寿命は3〜5年、PVCレザーは5〜10年が目安。保管環境で大きく変わる
- 本革の30〜50%の軽さと高い耐水性が強み。雨の日にも気兼ねなく使える
- 加水分解を遅らせるには「高温・多湿・密封」を避けることが最も効果的
- お手入れは水拭きと中性洗剤で十分。本革用クリームは使わないこと
- 「ヴィーガンレザー=シンセティックレザー」とは限らない。植物由来レザーも含まれる
- 長く使うなら本革、気軽に使い回すならシンセティックレザーというのが基本の使い分け
まずは手持ちのレザー製品のタグを確認して、PUなのかPVCなのか、本革なのかをチェックしてみてください。素材がわかれば適切なケアができますし、次に買い替えるときの基準も明確になります。
※情報は記事執筆時点のものです。最新の製品情報や価格は各メーカー・ショップの公式サイトでご確認ください。

コメント