「バブアーのジャケットをスーツの上から羽織りたいけれど、カジュアルすぎないだろうか」「どのモデルを選べばビジネスシーンでも浮かないのか」——そんな疑問を抱えている方は少なくありません。英国生まれのバブアー(Barbour)は、もともと漁師や労働者のための防水ジャケットとして誕生したブランドですが、近年はスーツスタイルとの組み合わせが大人のおしゃれとして定着しつつあります。この記事では、バブアーをスーツに合わせるためのモデル選び・素材の違い・コーディネートの基本から、お手入れ方法まで幅広く解説します。
・バブアーとスーツの相性が良い理由と英国での着こなし文化
・ビューフォート・ビデイル・ボーダーなど定番モデルの違いと選び方
・ワックスコットンとノンワックス素材の特徴比較
・スーツに合わせる際のサイズ選び・色合わせ・季節別コーデのコツ
バブアースーツスタイルが注目される理由と英国の着こなし文化

英国紳士がスーツにバブアーを合わせる伝統
バブアーとスーツの組み合わせは、実は英国では古くからある定番のスタイルです。1894年にジョン・バブアーが北東イングランドの港町サウスシールズで創業して以来、バブアーのオイルドジャケットは悪天候のなかで働く人々の実用着として支持されてきました。その後、英国王室がロイヤルワラント(王室御用達)を授与するほどの品質が認められ、カントリーサイドだけでなくロンドンのビジネス街でもスーツの上にバブアーを羽織る紳士の姿が見られるようになりました。日本ではまだ「アウトドアウェア」のイメージが根強いものの、バブアースーツの組み合わせは130年以上の歴史に裏打ちされた正統派の着こなしといえます。
バブアースーツが日本で広まった背景
日本でバブアーとスーツを合わせるスタイルが注目され始めたのは2010年代後半からです。背景には、ビジネスカジュアルの浸透があります。従来の通勤スタイルではステンカラーコートやトレンチコートが主流でしたが、働き方の変化に伴い「きちんと見えるのにかしこまりすぎない」アウターへのニーズが高まりました。バブアーのジャケットは、スーツの上から羽織るだけでほどよいカジュアル感と品格を両立でき、しかも防風・防水性能があるため通勤時の実用性も高いのが特徴です。ただし、従来のワックスドジャケットは独特のにおいやベタつきがスーツを汚す可能性があり、その点がネックとなるケースもありました。近年はノンワックスモデルの登場により、その課題が解消されつつあります。
ほかのアウターにはないバブアーならではの魅力
スーツに合わせるアウターとしてバブアーが選ばれる理由は、素材の独自性にあります。ワックスコットンは綿布にワックス(蝋)を染み込ませた生地で、化学繊維にはない深みのある光沢としなやかな風合いが生まれます。この質感がウールスーツの上品さと調和し、トレンチコートほど堅くなく、ダウンジャケットほどカジュアルにもならない絶妙なバランスを実現します。また、バブアーのジャケットは耐久年数が長く、10年以上着用している愛用者も珍しくありません。コーデュロイの襟やタータンチェックの裏地など、ディテールに英国の伝統が詰まっている点も、ビジネスシーンで「さりげない個性」を出すのに一役買っています。
バブアーとスーツの組み合わせは英国王室御用達ブランドならではの正統派スタイル。日本でもビジネスカジュアルの広がりとともに定着しつつあります。
バブアースーツに合うモデルはどれ?定番3型を徹底比較
ビューフォート(Beaufort)——スーツとの相性ナンバーワン
バブアースーツスタイルで最も支持されているモデルがビューフォートです。もともと狩猟(シューティング)用に設計されたモデルで、着丈がお尻をすっぽり覆う長さ(約76cm・38サイズ)に設定されています。この着丈がスーツのジャケット裾を完全に隠してくれるため、「ジャケットの裾がはみ出してだらしなく見える」という問題を回避できます。また、セットインスリーブ(肩の縫い目が肩線上にある袖付け)に近い構造で、スーツの肩ラインと干渉しにくいのもポイントです。注意すべきは、ビューフォートにはゲームポケット(背面の大型ポケット)がついており、荷物を入れすぎるとシルエットが崩れてしまう点。スーツに合わせる際はあくまでスマートに使うのがコツです。
ビデイル(Bedale)——バランス型だが着丈に注意
ビデイルはバブアーのなかで最も人気のある定番モデルで、乗馬用として開発されました。着丈はビューフォートより約5cm短く(約71cm・38サイズ)、腰回りがすっきりしたシルエットが特徴です。ラグランスリーブ(襟ぐりから斜めに切り替わる袖付け)を採用しているため腕を動かしやすく、自転車通勤にも向いています。ただし、スーツに合わせる場合はこの着丈の短さが弱点になることがあります。スーツのジャケット裾がバブアーの裾から見えてしまい、バランスが悪く見えるケースがあるのです。ビデイルでスーツスタイルを作る場合は、ショート丈のジャケットを選ぶか、ジレ(ベスト)スタイルとの組み合わせを検討するのが効果的です。
ボーダー(Border)——ロング丈でステンカラーコート感覚
ボーダーはバブアーの定番3型のなかで最も着丈が長いモデルで、膝上までカバーするステンカラーコートのようなシルエットが特徴です。着丈は約84cm(38サイズ)あり、スーツのジャケット裾はもちろん、スラックスの膝上まで覆ってくれます。セットインスリーブを採用しているため肩回りがすっきり見え、スーツのショルダーラインとの馴染みが良好です。フォーマル度はビューフォートよりさらに高く、グレーやネイビーのスーツと合わせれば、トラッドなビジネススタイルが完成します。注意点としては、着丈が長いぶん体格によっては重たい印象になること。身長170cm以下の方はビューフォートのほうがバランスを取りやすいでしょう。
| 比較項目 | ビューフォート | ビデイル | ボーダー |
|---|---|---|---|
| 着丈(38サイズ目安) | 約76cm | 約71cm | 約84cm |
| 袖付け | セットイン寄り | ラグランスリーブ | セットインスリーブ |
| スーツとの相性 | ◎ | ○(着丈注意) | ◎ |
| フォーマル度 | 高い | やや低め | 最も高い |
| おすすめシーン | 通勤・商談 | カジュアル通勤 | 商談・式典 |
| 価格帯(税込目安) | 5〜7万円台 | 5〜6万円台 | 5〜7万円台 |
※価格は2025〜2026年時点の国内正規価格帯の目安です。最新情報は公式サイトでご確認ください。
スーツに合わせるなら、まずはビューフォートが安定の選択肢。着丈がジャケット裾を隠してくれるかどうかが、モデル選びの最重要ポイントです。
バブアースーツの要——ワックスコットンとノンワックスの素材を知る
ワックスコットン(オイルドクロス)の構造と風合い
バブアーの代名詞ともいえるワックスコットンは、エジプト綿などの丈夫な綿布にパラフィンワックスを染み込ませた生地です。ワックスが繊維の隙間を埋めることで、雨粒を表面で弾く撥水性が生まれます。撥水度合いはJIS規格でいう3級(やや撥水)〜4級(撥水)程度とされており、小雨程度であればまったく問題ありません。生地の厚みは6オンス(約200g/㎡)前後で、一般的なシャツ生地(3〜4オンス)の約1.5〜2倍。この重厚感がスーツの上から羽織ったときにドレープ(自然な落ち感)を生み、上品なシルエットを作り出します。一方で、ワックスの油分がスーツの肩や襟に移るリスクがあるため、スーツに合わせる際は後述のメンテナンスと対策が欠かせません。
ノンワックス(2レイヤー)素材の特徴と利点
近年バブアーが力を入れているのが、ワックスを使わない「2レイヤー」と呼ばれる素材です。ポリエステルとコットンの混紡生地の裏面に透湿フィルムを貼り合わせた構造で、防水性を保ちながらも衣服内の湿気を外へ逃がす機能を持っています。ワックスコットンに比べて重量は約30〜40%軽く、手触りもサラッとしているのが大きな違いです。スーツスタイルにおける最大のメリットは「色移り・におい・ベタつき」の心配がないこと。大切なウールスーツを汚す心配なく、電車通勤でも気兼ねなく着用できます。見た目はワックスドほどの独特な光沢はありませんが、マットな質感がモダンスーツとの相性に優れています。
スーツ合わせで選ぶならどちらの素材が正解か
結論から言うと、初めてバブアースーツスタイルに挑戦するならノンワックス(2レイヤー)が無難です。色移りリスクがなく、クリーニングも家庭で対応しやすいため、ハードルが格段に低くなります。一方で、バブアーらしい味わい深い経年変化を楽しみたい方や、英国トラッドの空気感を重視する方はワックスコットンを選ぶ価値があります。ワックスモデルでスーツに合わせる場合は、年に1回のリワックス(ワックスの塗り直し)を欠かさないことが重要です。古いワックスが酸化するとベタつきやにおいが増し、スーツへの色移りリスクが高まります。どちらを選んでも「スーツの生地を傷めない」という視点を忘れないようにしましょう。
🧵 素材データ
素材名:ワックスコットン(オイルドクロス)
原料:エジプト綿などの長繊維綿+パラフィンワックス
撥水性:JIS 3〜4級相当(小雨対応)
耐久性:10年以上の着用実績あり(定期リワックスが前提)
重量:約6オンス(200g/㎡前後)
向いている用途:通勤アウター・カントリーウェア・タウンユース
※データは一般的な目安です。製品により異なります。
バブアースーツコーデの基本ルールと色合わせのコツ
スーツの色×バブアーの色——鉄板の組み合わせ3パターン
バブアースーツスタイルで最も重要なのは色の組み合わせです。鉄板パターンは3つあります。1つ目は「グレースーツ×ブラックバブアー」。グレーの落ち着いたトーンにブラックの引き締め効果が加わり、都会的で洗練された印象になります。2つ目は「ネイビースーツ×セージグリーンバブアー」。英国トラッドの王道配色で、上品かつ個性的。ただし職場の雰囲気によってはカジュアルすぎると感じられることもあるため、業種に合わせて判断が必要です。3つ目は「チャコールスーツ×オリーブバブアー」。ダークトーンの統一感がありながら、オリーブの深い緑がアクセントになります。避けたいのは、明るいブラウンスーツにセージグリーンを合わせるような「カントリー感が強すぎる」組み合わせ。ビジネスシーンでは浮いてしまう可能性があります。
襟元・インナーの合わせ方で印象が変わる
バブアーのジャケットはコーデュロイ襟が標準仕様であることが多く、この襟の存在感が着こなしの印象を大きく左右します。スーツスタイルでは、シャツの襟がバブアーの襟の下からきれいに見えるよう、タブカラーやボタンダウンなど襟の高さがあるシャツを選ぶのがポイントです。ネクタイはレジメンタル(斜めストライプ)やソリッド(無地)など、バブアーの英国テイストと合う柄がおすすめです。逆にペイズリーや派手な花柄のネクタイを合わせると、アウターのカジュアルさと柄の華やかさがぶつかり、まとまりのない印象になりがちです。マフラーを合わせる場合は、タータンチェックやヘリンボーン柄のウール素材が好相性です。
ボトムスと靴——全体のバランスを整える
バブアースーツスタイルでは、ボトムスの選び方も印象を決めるカギになります。スラックスはセンタープレス(折り目)がしっかり入ったものを選び、バブアーのカジュアルさとのバランスを取ります。裾幅はやや細めの17〜18cm程度がスッキリ見えて好相性です。靴は、内羽根ストレートチップなどの正統派ドレスシューズが安定ですが、バブアーのカジュアル感を活かすならスエードのチャッカブーツやウィングチップも選択肢に入ります。ただし、スニーカーとの組み合わせはビジネスシーンではカジュアルに寄りすぎるため、かなりドレスコードの緩い職場に限定されます。革靴の色はスーツがダークトーンならブラック、ミディアムグレーやネイビーならダークブラウンが合わせやすいでしょう。
- グレースーツ×ブラックバブアー
- ネイビースーツ×セージグリーンバブアー
- タブカラーやボタンダウンの襟高シャツ
- レジメンタルタイ・ソリッドタイ
- 明るいブラウンスーツ×セージグリーン(カントリー感過多)
- ペイズリーや派手花柄ネクタイとの組み合わせ
- ビジネスシーンでのスニーカー合わせ
- バブアーの襟に負けるローカラーシャツ
バブアースーツの色合わせは「ダークトーン同士」が失敗しにくい法則。グレースーツ×ブラックバブアーが迷ったときの最適解です。
バブアースーツスタイルで失敗しないサイズ選びのポイント

スーツの上に着るなら「いつものサイズ」ではダメな理由
バブアースーツスタイルで最も多い失敗が、サイズ選びのミスです。バブアーのジャケットはもともとアウトドア用に作られているため、一般的なコートやジャケットとはサイズ感が異なります。たとえばビューフォートの38サイズは、日本のメンズアウターでいうMサイズに相当しますが、下にスーツのジャケット(肩パッド入り)を着た状態を想定していません。肩幅はスーツのジャケットの肩パッドを押し潰さず収められるか、胸回りはボタンを留めた状態でも拳ひとつ分のゆとりがあるか——この2点を試着時に必ず確認してください。普段の洋服サイズよりワンサイズ上を選ぶのが一般的な目安とされています。
肩幅・着丈・袖丈——チェックすべき3つの寸法
スーツの上にバブアーを羽織る場合、特に注意すべき寸法は3つです。肩幅はスーツの肩パッドの端から左右に各1〜1.5cmのゆとりがあるのが理想。ゆとりがなさすぎるとスーツの肩が潰れてシワが入り、帰社後にジャケットだけになったとき不格好に見えます。着丈は前述のとおりジャケット裾が隠れる長さが必須で、ビューフォートなら問題ありませんが、ビデイルの場合は裾からジャケットが見えないか要確認です。袖丈はシャツの袖口が1〜1.5cm見える長さが美しいとされますが、バブアーの場合はリブ袖やベルクロ袖口のモデルが多く、やや長めでも問題ありません。大切なのは、必ずスーツを着た状態で試着することです。
ネット購入で失敗しがちなパターンと対策
バブアーは正規品・並行輸入品・古着がオンラインで広く流通しており、ネット購入する方も多いブランドです。しかし、スーツに合わせる前提でのネット購入には注意が必要です。よくある失敗は、英国サイズと日本サイズの換算を間違えるケースです。バブアーの英国サイズ「36」は日本のS相当、「38」はM相当、「40」はL相当が大まかな目安ですが、モデルや年代によってフィット感が異なります。特にヴィンテージのバブアーは現行品より身幅が広めに作られていることが多く、サイズ表記だけを信じると「着丈は合うのに身幅がダボダボ」という事態になりかねません。可能であれば、まず正規店やセレクトショップで試着して自分のサイズを確認してから、ネットで購入するのが賢い方法です。
バブアーのジャケットをスーツの上に着る場合、普段のサイズ感で購入すると肩が窮屈になりがちです。必ずスーツを着た状態で試着するか、ワンサイズ上を基準に検討してください。
意外と知らない?バブアースーツの「におい・色移り」問題と解決策
ワックスドジャケット特有のにおいの正体
バブアーのワックスコットンジャケットを初めて手に取った方が驚くのが、独特のにおいです。このにおいの正体は、撥水加工に使われるパラフィンワックスと動物性油脂(かつてはタラの肝油などが使われていた)の混合物が酸化した匂いです。新品のうちはワックスの石油系のにおいが強く、時間の経過とともに脂っぽい匂いに変化していきます。実は意外と知られていないのですが、このにおいは完全にゼロにすることは構造上できません。ワックスが撥水性の源であるため、においを消す=撥水性を失うことになるからです。ただし、風通しの良い日陰で2〜3日干すだけでも、においの強さは体感で半分程度に減ります。スーツに合わせる前に、まずは陰干しの習慣をつけることをおすすめします。
スーツへの色移りを防ぐ3つの対策
バブアースーツスタイル最大の懸念が、ワックスの色移りです。特にライトグレーやベージュなど淡い色のスーツは影響を受けやすいため、注意が必要です。対策は3つあります。1つ目は「リワックスの直後に着ない」こと。リワックス後は48時間以上乾燥させ、表面のワックスが完全に定着してから着用してください。2つ目は「肩掛け用のショールや薄手のストールを間に挟む」方法。スーツの肩部分を物理的にガードできます。3つ目は「ノンワックスモデルを選ぶ」というそもそもの回避策です。ライトカラーのスーツを中心に着る方は、最初からノンワックスを選んだほうが精神的にもストレスがありません。大切なスーツへの色移りは取り返しがつかないことがあるため、「予防」に注力するのが鉄則です。
電車通勤でバブアーを着る際のマナーと工夫
ワックスドのバブアーを着て満員電車に乗ると、隣の人の衣服にワックスが付着する可能性があります。英国では車通勤が一般的なため問題にならないシーンでも、日本の通勤環境ではマナーの観点から配慮が必要です。混雑する時間帯にワックスドジャケットを着る場合は、コートを脱いで裏返しに腕にかける、もしくはバッグに入る折りたたみサイズのモデルを選ぶなどの工夫が求められます。この点でも、ノンワックスの2レイヤーモデルは電車通勤に適した選択肢です。ワックスドにこだわりたい方は、比較的空いている時間帯に通勤するか、自転車通勤・車通勤の方に限定するのが現実的といえるでしょう。
ワックスドバブアーのにおい・色移り問題は「完全にゼロにはできないが、対策でコントロールできる」が正解。不安な方はノンワックスから始めるのが安全です。
バブアースーツを季節ごとに楽しむ着こなしアイデア
秋(9〜11月)——バブアースーツが最も映える季節
バブアーとスーツのコーディネートが最も活きるのは秋です。気温が15〜20℃前後の時期は、スーツの上にバブアーを1枚羽織るだけで快適な温度調節ができます。ワックスコットンの防風性が冷たい秋風を遮り、裏地のタータンチェックが紅葉の景色と相まって季節感のある装いになります。この時期のおすすめは、ミディアムグレーのフランネルスーツにセージグリーンのビューフォートを合わせるスタイルです。フランネルの柔らかな起毛感とワックスコットンのしっとりした質感が、秋らしいテクスチャーのコントラストを生みます。足元はダークブラウンのスエードチャッカブーツを合わせると、季節感がさらに増します。
冬(12〜2月)——ライナー活用で真冬にも対応する
バブアーのジャケット単体の保温性は、ダウンジャケットやウールコートには及びません。ワックスコットンは防風性に優れるものの、生地自体に断熱効果が少ないためです。冬にバブアースーツスタイルを楽しむためのカギは、取り外し可能なライナー(中綿の内蓋)の活用です。バブアーの定番モデルにはジップインライナーが用意されており、ビューフォートにはポーラキルトジャケットなどのライナーを装着できます。ライナーを装着すると、保温力は裏ボアのウールコートに近いレベルまで向上するとされています。ただし、ライナー分の厚みが加わることで身幅がさらにきつくなるため、冬の使用を想定するなら購入時にライナー込みで試着することが重要です。
春(3〜4月)——軽やかなノンワックスで季節の変わり目を乗り切る
春先はバブアーの2レイヤー(ノンワックス)モデルが最も活躍する季節です。朝晩の気温差が大きい3〜4月は、サッと羽織って脱げる軽量なアウターが重宝します。2レイヤーモデルの重量はワックスドモデルの約60〜70%で、たたんでブリーフケースやトートバッグに入れることも可能です。色はネイビーやブラックを選ぶと、春らしいライトグレーやブルー系のスーツとの相性が良くなります。この時期にワックスドモデルを着ると、暖かい日には汗でワックスのにおいが強まることがあるため、春はノンワックスに切り替えるのが快適でしょう。
夏場の保管——次のシーズンまでコンディションを保つ方法
バブアーは夏場(5〜8月)は着用機会がほぼないため、正しい保管方法を知っておくことが大切です。ワックスドモデルの場合、畳んでしまうとワックスが折り目に沿って固まり、跡がつく「ワックスクラック」の原因になります。必ず肩幅に合ったハンガーにかけ、風通しの良い日陰で保管してください。クローゼットの中にしまう場合は、衣類カバーをかけてホコリの付着を防ぎつつ、月に1回は扉を開けて空気の入れ替えをするのがベストです。ノンワックスモデルは折りたたんでの保管でも問題ありませんが、やはりハンガー保管のほうが型崩れを防げます。防虫剤はワックスと化学反応を起こす可能性があるため、天然素材のシダーウッドチップなどを併用するのが安心です。
バブアーのワックスドジャケットに防虫剤を使う際は要注意。ナフタリン系の防虫剤はワックスと反応してシミの原因になることがあります。天然のシダーウッド(杉チップ)がおすすめです。
バブアースーツのお手入れとメンテナンスで長く愛用するコツ
ワックスドモデルの日常ケア——帰宅後の5分が寿命を延ばす
バブアーのワックスコットンジャケットを長く使うために最も大切なのは、日常のケアです。帰宅後にやるべきことはシンプルで、湿らせた柔らかい布でジャケット全体を軽く拭き、汚れやホコリを落とすだけ。所要時間は5分程度です。このひと手間で、ワックス表面に付着した排気ガスや砂ぼこりが除去でき、生地の劣化を遅らせることができます。水拭きの後は必ず室温で自然乾燥させてください。ドライヤーやヒーターの近くに置くとワックスが溶け出し、ムラの原因になります。乾燥温度の目安は40℃以下。この温度を超えるとワックスが液状化し始めるため、夏場の車内放置も厳禁です。
年に1回のリワックス——手順と失敗を避けるポイント
バブアーのワックスドジャケットは、年に1回程度のリワックス(ワックスの塗り直し)で撥水性と光沢を回復させることができます。バブアー純正のソーンプルーフドレッシングを使うのが基本です。手順は、ジャケットをハンガーにかけた状態でドライヤーの温風(弱風)を当てて表面を温め、缶から取り出したワックスを布に取り、薄く均一に塗り広げるだけです。コツは一度に厚塗りしないこと。薄く2回に分けて塗るほうが、仕上がりがムラになりにくく、ベタつきも抑えられます。よくある失敗は、ワックスを室温のまま塗ろうとするケースです。ワックスが固いまま塗ると生地の表面でダマになり、見た目が白っぽくなってしまいます。塗り終えたら24〜48時間の自然乾燥で完了です。
ノンワックスモデルのケア——家庭洗濯の可否と注意点
ノンワックス(2レイヤー)モデルのお手入れは、ワックスドに比べて格段にシンプルです。軽い汚れであれば湿った布で拭くだけで十分ですが、シーズン終わりには手洗いも可能です。30℃以下のぬるま湯におしゃれ着用の中性洗剤を溶かし、押し洗いで汚れを落とします。脱水は洗濯機を使わず、バスタオルに挟んで水分を吸わせるタオルドライ方式が安全です。2レイヤーの透湿フィルムは塩素系漂白剤や柔軟剤で劣化するため、これらの使用は厳禁。乾燥機も高温でフィルムが剥がれる原因になるため使えません。平干しで自然乾燥させるのがベストです。正しくケアすれば、ノンワックスモデルでも5〜8年程度は透湿防水機能を維持できるとされています。
帰宅後、湿らせた柔らかい布でジャケット全体を軽く拭き、ホコリと排気ガス汚れを落とす
室温(40℃以下)で自然乾燥させる。ドライヤー・ヒーターは厳禁
年に1回、ソーンプルーフドレッシングで薄くリワックスし、24〜48時間乾燥させる
ワックスドバブアーのケアは「帰宅後5分の水拭き+年1回のリワックス」。この2つを守るだけで10年以上着用可能です。
まとめ:バブアースーツスタイルで品格ある通勤を始めよう
バブアーとスーツの組み合わせは、130年以上の歴史を持つ英国紳士の正統派スタイルです。日本でもビジネスカジュアルの浸透とともに、通勤アウターとしてバブアーを取り入れる方が増えています。防風性・撥水性という実用面と、ワックスコットンやコーデュロイ襟が醸し出すクラシカルな風合いを兼ね備えたバブアーは、トレンチコートほど堅くなく、ダウンジャケットほどカジュアルにもならない「ちょうどいい」選択肢です。
この記事の要点を整理します。
- スーツに合わせるモデルは、着丈がジャケット裾を隠せるビューフォートが最も安定。ロング丈希望ならボーダーも好選択
- 素材はワックスコットン(味わい重視)とノンワックス(実用性重視)の2択。初挑戦ならノンワックスがおすすめ
- 色合わせは「グレースーツ×ブラックバブアー」が鉄板。ダークトーン同士の組み合わせが失敗しにくい
- サイズはスーツ着用状態でワンサイズ上が目安。必ずスーツを着た状態で試着するのが鉄則
- ワックスドのにおい・色移り問題は「予防」がカギ。リワックス直後の着用を避け、ライトカラーのスーツには要注意
- 秋がベストシーズンだが、ライナーの活用で冬も対応可能。春はノンワックスモデルへの切り替えが快適
- 日常ケアは帰宅後5分の水拭き、年1回のリワックスで10年以上の長寿命を実現できる
まずはバブアーの正規店やセレクトショップで、お手持ちのスーツに近い服装で試着してみてください。モデルやサイズの相性を自分の目で確かめるのが、バブアースーツスタイルを成功させる最初の一歩です。スーツとバブアーの組み合わせが見つかれば、毎朝の通勤が少し特別な時間になるはずです。

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